研究概要 |
本研究においてはゲノム全体を対象として発癌の過程に関与する遺伝子変異を捕らえることを目指している。 1.染色体欠失領域の検出 RDA法を用いて胃癌細胞株2MD3及び同一症例からの健常部DNA(NF8)との間でサブトラクションハイブリダイゼーションを繰り返し行なうことによって、健常部のみに存在するDNA、すなわち癌部に欠失したDNA断片のみを変異産物として特異的に増幅した。RDA産物の塩基配列を決定し、Sequence Tagged Site(STS)を作成した。 2.欠失領域のクローン化と染色体マッピング 上述のSTSを用いて雑種細胞パネルをスクリーニングし、局在する染色体を決定した。CEPH YACライブラリーのスクリーニングの結果からより精密な局在化ができた。欠失領域のクローン化にはBACクローンを用いた。ゲノムデータベースを活用し、遺伝子座近傍に存在する候補遺伝子を検索した。7-14(1p),7-61(3p distal),7-50(16q23)及び7-20(3p14)の4つのホモ欠失産物が得られ、7-50及び7-20は2Mから2MD3への転化の過程において生じた欠失であった。一例として7-50(16q23)周囲のマーカーとの位置関係を示す。D16S518○-afma336yg9○-WI-2755●-D16S3029○-D16S504○(○:retention,●:deletion)であり、欠失領域はおよそ1Mb以内に限定された。 3.FHIT遺伝子の構造解析 胃癌細胞株2MD3において検出された3p14におけるホモ欠失部位に報告されたFHIT遺伝子(Ohta,et al.1996)について解析を行った。なお、FHIT遺伝子の第4エクソンは我々が以前にエクソントラッピング法で同定した配列と同一であった。胃癌および、子宮頚癌においてスプライシングの異常によると思われる異常な転写産物が高頻度に認められた。ただし、点突然変異は見いだされなかった。
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