本年度は、多くの遺伝子の転写開始点を決定し、新規遺伝子の発現及び機能の解析に資することを目的に、SK-N-MC由来の5'濃縮cDNAライブラリーzrv6より、約2400クローンの1パス塩基配列決定を行った。ホモロジー検索を行ったところESTとホモロジーのあったものが23%、ミトコンドリア(mt)由来のものが3%、ベクターと一致するものが2%、ヒト以外の生物の遺伝子にホモロジーを持つものが4%であり、何等の遺伝子ともホロモロジーを示さないもの(new)は21%であった。約50%(known+mt)のものが既知のヒトの遺伝子に一致していた。このうち、約8割が既知の5'端と一致するか、それより長いもの(full)であった(41%/50%)。クローンの重複度は2400クローン配列決定した時点で約2.5である。ホモロジーを見出した既知ヒト遺伝子のmRNAの長さの分布は、クローンの数として、4000塩基長を超えるmRNA由来のものが5%、3000-4000のものが13%、2000-3000のものが25%、1000-2000のものが42%、1000以下のものが15%であった。4000塩基長を超える長いmRNAの転写開始点を決定するのに有利な5'端濃縮cDNAライブラリーを使用したにもかかわらず、4000を超えるものの頻度は低く、また、それらの中でfullでない割合も33%に上る。この原因につき最も疑われるのはmRNAの質である。長いmRNA程壊れやすく、polyAによる選択で5'側が失われやすい。mRNAの分離精製に工夫が必要である。今回、newとされた約500クローンについては、200種程度の新規遺伝子があるのではないかと期待している。ESTならびにnewとされたクローンはその機能が未知の遺伝子由来のものであり、今後、全塩基配列を決定する必要がでてくるのではないかと思われる。
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