研究概要 |
インプリント遺伝子などを含むゲノム領域を、アレル間におけるDNA複製の非対称性を示す領域、即ち統括的に機能制御を受けるゲノム領域として捉えて探索する一方、このようなゲノム領域が、細胞核内でどのような挙動を示すか、複製制御領域の範囲、インプリンティング現象との関連性についても検討した。染色体バンドレベルでの複製制御領域の探索としてダイレクトRバンド法を伸展染色体について試み、FISHによってマップしたところ、ヒト11pに数カ所,6q,3p,4p,4q,1p,11q等がアレル間で明らかにバンドが異なる領域として同定された。また、マウスにおける伸展染色体の作製にも成功した。一方でインプリント遺伝子領域は遺伝子発現や複製タイミングがアレル間で異なることから、ゲノムの核内構造もアレル間で異なる可能性があると考え、スライドガラス上に培養したマウス線維芽細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、Igf2r領域に存在するコスミドクローン3個を用いてマルチカラーFISHでこの領域のゲノムの核内構造を描き出した。その結果、早く複製するアレルが複製後だけでなく、複製前にも広く散らばったFISHシグナルを与え、この領域のゲノムが伸展状態にある一方、遅く複製するアレルはS期初期にはコンパクトな状態にあった。また、これらのアレル特異的な複製タイミングとゲノムの伸縮はヒストンの脱アセチル化阻害剤を培養中に添加することで消失した。また、PW/AS領域も同様であった。これらの結果により、インプリント遺伝子が存在するゲノム領域の複製タイミングとゲノムの伸縮がよく一致し、ヒストンのアセチル化が関与すること、また、アレル特異的遺伝子発現とは必ずしも一致しないことが強く示唆された。その他、ヒトやマウスの各種遺伝子のFISHマッピングを、Replication Rバンド法と高感度冷却CCDカメラシステムによるイメージングを組み合わせて行った。
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