研究概要 |
鹿児島県大島郡喜界島北部志戸桶の海岸で完新世サンゴ礁と現生サンゴ礁の調査を行った.完新世の段丘面II〜IV上では,本研究の設備として購入したハンドコアラーを用いて長さ1〜3mのコアを6本掘削した.コアには主にAcropora hyacinthus,A.digitifara,A.gemmirera,A.monticulosaなどの卓状・破覆状のサンゴが認められた.これらのコアに含まれる造礁サンゴと石灰藻の群集より堆積環境が水深5mよりも浅い礁斜面あるいはそこに発達した縁溝であることが判明した.現生サンゴ礁ではスキューバを用いて水深10〜30mのサンゴ群集を記載し,同位体比測定用のハマサンゴ(Prorites spp.)を水深5m毎に採取した. 喜界島の現生及び完新世初期(9.2kyBP)の造礁サンゴProrites spp.の骨格に記録された酸素・炭素同位体比を測定した.現生試料は水深9mの礁斜面からスキューバダイビングによって得られたものであり,化石試料はII面の礁池で1996年に共同研究者の太田陽子と大村明雄が掘削したボーリングコアに含まれていたものである.造礁サンゴ骨格の酸素同位体比は,氷床量,水温,塩分,vital effectによって決定されていると仮定し,同位体比の変化を説明するモデルを作成した.石垣島米原沖の造礁サンゴの酸素同位体比を基にして,以下のようなvital effectを含めたδ値(δv^<18>O)の換算式を作った. δv^<18>O=-0.182T+0.04D-0.55 ただし,T(℃)は水温,D(m)は水深である.年輪幅によって推定した水深とδ値から,現在と9200年前の年平均海水温はそれぞれ21.9℃と22.0℃と算出された.
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