研究概要 |
本研究は,これまで主として電子顕微鏡を用いて進めてきた準結晶および周辺結晶相の構造解析をより進めて,数千以上の反射強度の測定に基づく原子座標および占有率を含めた精密構造解析を行うことを目的とする.このような観点から,本研究では,解析対象となる試料のクオリテイを短時間で評価でき,かつ数千以上のX線散乱強度を短時間に測定できるイメージンプレートを搭載した多目的ワイセンベルグ型X線回折装置を新たに開発し導入した.本装置は,回転対陰極型の18kWX線発生装置を装備しており,分光結晶で単色化したX線を結晶試料に照射し,回折X線はイメージングプレートに記録される,イメージングプレートが2枚装着されているため,露光および読みとりが同時に実行でき測定時間が大幅に短縮できた.また,従来の装置には付属されていなかったμ角制御機構も搭載し,全空間の強度データをブラインド領域なしに測定できる.ちなみに,本装置を使うと,従来型の装置では約1週間の測定時間が要された試料でも,半日で解析に十分なデータの取得が可能である.本装置を用いて,本研究グループはAl-Pb-Mn合金系で2nmサイズの正二十面体クラスターおよび1.2nmサイズの正二十面体クラスターを世界に先駆け発見した.また同時に,このクラスターの準周期配列によって今まで構造が未解明であった正二十面体準結晶に関しても詳細な構造モデルを提唱することができた.またAl-Cu-Ru合金系でも,サイズがAl-Pb-Mn合金系で発見されたクラスターと黄金比の関係にある新しい原子クラスターを発見している.本研究プロジェクトによって得られた研究成果は,準結晶に関する国際会議に招待されるなど,世界的にも高い評価をうけた.
|