配分額 *注記 |
31,200千円 (直接経費: 31,200千円)
1998年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
1997年度: 15,900千円 (直接経費: 15,900千円)
1996年度: 11,900千円 (直接経費: 11,900千円)
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研究概要 |
本研究の目的は,キャピラリー電気泳動による金属錯体やイムノコンプレックスなどの分子錯体に対する新たな分離機能と検出機能の創発にある.3カ年の研究課題を大きく以下の3点に絞り,それぞれにフロンティアを形成しうる成果を上げた. (1) 新しいCEイオン分離モード・システムの開発: (1-1) アニオンのCE高度分離を目指し,溶液内のイオン-イオン相互作用をイオン泳動制御パラメータとして駆使するCE分離システムとしてカチオン性高分子電解質を加えることを着想し,その有用性を検証した. (1-2) イオン会合CEシステムにおけるイオン泳動制御パラメータとして,尿素などの疎水的水和破壊剤の添加を着想し,イオン会合現象の溶液化学的基礎となるイオン泳動データと同時に,新たな分離システム構築の萌芽となる結果を得ている. (1-3) ポリマーゲルやセルロースを用いる分子ふるいモードCEによる天然フミン酸・フルボ酸の分離とピークパターン識別化を提案し,水環境の評価技術に寄与する成果を得た. (2) CE精密分離場を最大限に利用しうるイオン識別・キラル識別機能分子の開発: (2-1) フェノール4分子を硫黄原子で環状に架橋したチアカリックスアレーンを基体とし,アルカリ金属から遷移金属に至る多くカチオンに対応する多様なKD-CE適合性試薬を合成できることを見いだした. (2-2) チアカリックスアレーンの架橋硫黄のスルホキシドおよびスルホンへの選択的酸化反応を開発した.前項の成果とも合わせ、カリックスアレーン類の新たな金属イオン選択性創出に成功した. (2-3) キャピラリー内壁の不斉修飾剤として機能する軸不斉1,1-ビナフタレン類として,4-位に長鎖カルボキシル基を有する1,1-ビナフタレン類の高効率的不斉合成に成功した. (3) CE-金属イオン分離に適合する配位子の計算機化学的な分子設計アプローチの方法確立: (3-1) 配位子の分子設計および溶媒の効果を有限温度、圧力で扱うことを目的に,密度汎関数法,分子動力学法,モンテカルロ法,バーチャルリアリティなどを活用する統合コンピュータ化学システムを構築した. (3-2) 密度汎関数法,分子動力学法,コンピュータグラフィックスを活用し、種々の金属錯体の構造と配位子の種類・置換基効果との関連を検討して,分子認識能設計の指針を原子レベルで解明する手法を提案した. (3-3) 錯体の構造ダイナミックスと電子状態を有限温度条件下で高速計算することが可能な粗視化量子分子動力学計算プログラムを開発し,その有用性を検証した.
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