研究課題/領域番号 |
08407030
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
外科学一般
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高木 弘 名古屋大学, 医学部, 教授 (70154755)
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研究分担者 |
岡田 秀親 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (30160683)
横山 逸男 名古屋大学, 医学部, 講師 (60240206)
鬼頭 純三 名古屋大学, 医学部, 教授 (60022802)
村松 喬 名古屋大学, 医学部, 教授 (00030891)
中島 泉 名古屋大学, 医学部, 教授 (40022826)
林 衆治 名古屋大学, 医学部, 助手 (30218573)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
30,700千円 (直接経費: 30,700千円)
1997年度: 11,500千円 (直接経費: 11,500千円)
1996年度: 19,200千円 (直接経費: 19,200千円)
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キーワード | 異種移植 / トランスジェニック動物 / 補体不活化因子 / 異種抗原 / ガラクトシルトランスフェラーゼ / フコシルトランスフェラーゼ / 遺伝子制御 / トランスジェニックブタ / ノックアウト動物 / α1.3GT / α1.2FT |
研究概要 |
移植医療におけるドナー不足は深刻な問題であり、世界中で動物の臓器を利用する異種移植研究が活発に行われている。ブタがドナーとして最適であると考えられているが、激烈なる免疫反応を制御することが最大の課題である。レシピエントに存在する抗ブタ自然抗体および補体の活性化による超急性拒絶反応、血管内皮細胞、凝固系の活性化、サイトカイン、細胞性反応による遅延型拒絶反応の問題を解決する必要がある。 遺伝子制御による異種移植の臨床応用に少しでも近づけるためにの有用な情報を提供することが本研究の目的である。 拒絶反応を抑制するためのヒト補体制御因子を導入したトランスジェニックブタは、既に作出に成功しており、異種抗原であるαガラクトース(αGal)抗原発現を抑制したブタの作出を試みている。私どもは、FT遺伝子トランスジェニックブタ作出、アデノウイルスを用いたFT遺伝子やGTリボザイムの導入、GT遺伝子の代わりにFT遺伝子を導入するノックインの手法を開発した。 αGal以外の抗ブタ抗体の可能性として、Hanganutziu-Deicher(HD)抗原をブタの血管内皮細胞に証明した。ヒトにはこの抗原は存在せず、一部のヒトにおいてHD抗体の存在が明らかにされ、αGal抗原を除去した後に問題となりうることが示唆された。しかし、ヒヒにもHD抗原が存在することから、HD抗原抗体反応についてはヒヒはヒトのモデルとなりえないことが明らかにされた。 前臨床試験としての霊長類(ヒヒ)を用いた移植実験モデルを確立するために、ヒヒの血液検査、ウイルス検査を行った。生化学、補体活性はヒトとほぼ同じであり、抗ブタ抗体においても超急性拒絶反応に重要な役割を果たすIgMはヒトとほぼ同程度に保有しており(IgGはヒトと比較して低い)、ブタからヒトへの移植モデルになりうると考えられた。ウイルス抗体検査においても、一部Bウイルス抗体の陽性結果が出たが、HSVとの交差反応であると考えられ、実験の安全性についても問題を認めなかった。 遺伝子操作により、ドナーブタを移植に適するように形質転換する研究が行われているが、主要な抗ブタ抗体の結合するαガラクトース抗原の発現を完全に消去するブタは今の所完成していない。そのため、移植前に抗ブタ抗体の除去は必要不可欠である。ブタの臓器を用いた灌流では、腎臓で約30%、肝臓で約50%の抗体が除去された。ABO不適合移植の臨床で抗A、抗B抗体を除去するために使用されているDFPP(double filtration plasmapheresis)では95%以上の抗ブタ抗体除去効率が示され、その有用性が示された。 急性肝不全の治療としての補助的同所性肝移植モデルを確立し、タンパク分画によりブタ、ヒヒの肝細胞により合成されるタンパクを区別することに成功した。 異種移植拒絶反応を抑制するための基礎研究を多方面から推進し、今後遺伝子操作により拒絶反応の起しにくい形質転換ドナーブタから霊長類(ヒヒ)へのより臨床に近い形で研究を進める必要がある。
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