研究分担者 |
饗場 篤 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (20271116)
永福 智志 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (70262508)
田村 了以 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (60227296)
西条 寿夫 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (00189284)
田渕 英一 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (70272911)
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研究概要 |
I. 空間・場所情報の統合機構 ラットに脳内自己刺激を報酬として,i)ランダムな歩行移動(RRPST),およびii)場所認知に基づく2つの場所間の往復移動(PLT)を行なわせ,海馬体ニューロン活動と歩行移動中の物理的因子(移動スピード,移動方向,および移動回転角度)との相関を解析した。その結果,PLT課題ではRRPST課題と比較して,すべての物理的因子に対する海馬体ニューロンの応答選択性が増加し,課題要求性により,より重要な情報に応答性が能動的にシフトしていることが示唆された。また,サルにジョイ・スティックを操作させ,i)サル用自動車を能動的に実験室(実空間)内を移動させる課題,ii)自動車の位置を固定した状態で,液晶画面(仮想空間)上でポインターを移動させる課題に対する海馬体ニューロンの応答様式を解析した。その結果,サル海馬体および海馬傍回には実験室内の特定の場所あるいは液晶画面上の特定の位置で活動が上昇する場所識別ニューロンが存在することが明らかになった。さらに,これら場所識別ニューロンの多くは,各課題で異なる応答様式を示し,各課題にごとに異なるニューロン集団により実空間あるいは仮想空間が符号化されていることが判明した。 II. 情動の発現・抑制機構 ラット視床背内側核(MD)および前部帯状回(AC)からニューロン活動を記録し,報酬および罰と連合した視覚,または聴覚刺激(要素刺激),および要素刺激を組合わせた複合刺激(視覚-聴覚刺激の同時呈示:構成刺激)に対するニューロンの応答性を解析した。その結果,MD内側部には報酬と連合した感覚刺激の認知,および感覚刺激と報酬の連合形成に関与するニューロンが,MD外側部には行動学習(リック運動)に関与するニューロンが局在することが明らかになった。また,AC前腹側部には報酬と連合した感覚刺激の認知,および感覚刺激と報酬の連合形成に関与するニューロン(条件刺激関連ニューロン)が,AC後背側部には行動学習(リック運動)に関与するニューロンが局在することが明らかになった。 III. 脳-免疫相関の中枢機構 ラットに反復寒冷ストレスを負荷すると,i)摂食量は増加するにもかかわらず体重増加率が減少し,ヒスチジンに対する味覚嗜好性が亢進する,ii)視床下部内側視索前野における免疫サイトカイン(IL-1β)のmRNA発現量が増加し,それにつれてGnRHのmRNA発現量が減少することが判明した。また,i)同ストレスを負荷したラットの視床下部外側野および腹内側核ニューロンの自発放電活動がそれそれ増加および減少し,ii)感覚刺激-報酬連合課題の予告音期および摂取期に非識別応答を示すニューロンの割合が増加した。これら自発放電頻度の変化は,それぞれの領域におけるIL-1βのmRNA発現の減少および増加と対応関係にあることが判明した。
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