研究概要 |
病院における退院計画を確立し,それと地域におけるケアマネジメント機関の連携を推進する方策について検討することを目的として,平成8年度には日本及び諸外国の退院計画の動向を調査し,平成9年度には5つの機関においてそれらの推進における課題と今後の方策についての調査研究を行った. 1. 在院日数短縮の傾向により退院援助は病院SWの主要業務となりつつあり,看護婦らの取り組みや,地域と病院との連携システム志向も始まっている.しかしまだ,こうした取り組みは特定の職種や診療科の取り組みにとどまり,病院全体の活動や地域全体のシステムとなっているのはまだごくわずかである. 2. 退院計画の効果としては,スムーズな退院と退院後の療養生活の安定のみでなく,患者・家族の自信や保健医療福祉への信頼感の育成といったエンパワーメントの面でも認められた.また病院職員のモラールや経営面でもよい効果がうかがわれた. 3. 退院計画実施にあたっては,病棟医師や看護婦らの認識の共有やリファーシステムの面で問題が多い.特に大病院では診療科・病棟による差が大きく,主治医の退院決定権や入院時の説明の仕方等の問題から検討する必要がある.クリティカルパスは入院時の医療ケアプロセスを明確化する点で効果があるが,標準化しにくい患者・家族側の心理・社会的条件や地域のサービス状況をこのプロセスにどう組込むかが課題となる. 4. 退院後のケアマネジメント担当機関の状況には地域差・機関差が大きく,またサービス決定までの手続きの複雑さや時間が病院の退院計画の阻害要因となっている.病院と地域の役割分担面では,大都市部ではアメリカ型,町村部ではデンマーク型をモデルに,介護保険とあわせて検討することが必要である.
|