研究分担者 |
関根 康正 筑波大学, 歴史・人類学系, 助教授 (40108197)
曽我 享 (曽我 亨) 弘前大学, 人文学部, 助手 (00263062)
市川 光雄 京都大学, 大学院・アジアアフリカ地域研究科, 教授 (50115789)
寺嶋 秀明 (寺島 秀明) 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (10135098)
牛島 巌 筑波大学, 歴史・人類学系, 教授 (10091886)
前川 啓治 筑波大学, 歴史・人類学系, 講師 (80241751)
小野沢 正喜 筑波大学, 歴史・人類学系, 教授 (90037044)
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配分額 *注記 |
5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
1998年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1997年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1996年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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研究概要 |
二重経済に関する従来の研究は,経済学の分野では伝統部門と近代部門を想定して,貨幣経済の浸透と成長がどのように達成されるのかという問題や,投資の受容と有効性,伝統部門における消費財の需要の限界性と技術革新の効果といった問題が中心的にあつかわれてきた。社会学の分野では,伝統部門の儀礼的交換制度と資本主義的経済の適合性が問題とされてきた。いずれも,伝統部門が近代部門に一方的に組み込まれると想定されているのが共通していた。 しかし,本研究では,二重経済を特定の地方経済と関連づけて複合的構造を描きだし,他の社会との構造的比較をこころみた。アフリカのピグミー系狩猟民に関しては,市川が,地域経済における市場経済と生業経済の結節に焦点をしぼり,社会と生業資源の持続性のあり方を明らかにし,寺嶋は,そのような持続性を維持しうるピグミーたちの世界観と社会原理を解析した。牛島は,フィリピン島嶼部の沿岸漁業活動,土器や刃物の制作とその流通を社会交換論と地方経済論の視点から分析した。関根は,インドにおける経済自由化を指向する国家的な開発指向と国民統合の問題を,ヒンドゥー・ナショナリズムの動態に着目して解読を試みた。 その結果,伝統的部門は,一方的に外来の近代部門に従属して吸収されるということよりも,むしろ両者の相互補完的な展開だけでなく,前者の保守的体制のなかに選択的に後者が組み込まれるということ,二重経済を維持している共存原理の実効性と多様性が明らかされたこと,そしてグローバルな新秩序論や世界システム論に代表される政治的,経済的な一元論の虚構性が明確にされた。 このような新たな知見を軸にして,二重経済の維持機構とその社会的意味,ならびに伝統部門と近代部門の相補的な展開の構造をあきらかにすることが,将来的にも重要である。
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