研究概要 |
本研究の目的は,バブル崩壊後の日本企業における会計方法選択の要因と動機およびその実行に関するメカニズムを明らかにし,その経済的・会計的意味を究明することである。 本研究では,まず企業の会計方法の実態,そしてその方法選択の動機を分析し,そこからいくつかの仮説を導き,それについて検証し,企業の会計政策について分析するという手法をとった。 われわれが関心をもっているのは,バブル経済が崩壊し始めた1990年以降の日本企業がどのような会計方針をとり,それをどのような動機に基づいて変更したのかという点である。バブル崩壊時のように大きな利益変動が生じる場合には,企業ではこうした会計的裁量行動を採らざるを得ないと考えられる。 昨年度まで,仮説の正しさを追証するために内外の文献のサーベイを行うとともに,問題点を提示した。最終年度は,その実証分析のために有価証券の評価基準や退職給与引当金の設定基準などのデータベースを構築する作業を行い,それを基に企業の会計的裁量行動の実態を分析することを試みた。ここでは,有価証券報告書総覧を利用して,バブル崩壊時点の1990年11月から1991年10月までのデータと,それから5年後の1994年11月から1995年10月までのデータの2時点について集計を行い,分析した。 最近の会計研究は,報告利益を発生項目額の裁量的調整によって操作するという経営者の裁量行動が説明される傾向にある。今後,われわれはここで構築したデータベースを基に,この視点から経営者の会計手続きに関する予測を実証的に検討していきたいと考えている。
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