研究概要 |
半導体量子ドットの永続的ホールバーニング現象の理解が進み,併せて,この現象のサイト選択分光法への応用により,半導体量子ドットの電子エネルギーの粒径依存性を調べる詳細な研究が進んだ.続いて,半導体量子ドットにおける永続的ホールバーニングの形成効率および励起子-フォノン相互作用について研究が進展した.(1)永続的ホールバーニング現象は,発光スペクトルにも影響を及ぼし,CuCl量子ドットでは,発光スペクトル中にバーニング光と一致するエネルギーに鋭いディップ,低エネルギー側にそれに付随するイオン化励起子による構造が見えた.これはか量子ドット中のイオン化励起子の最初の観測となる.(2)NaClマトリックス中のCuClナノクリスタルに適当な熱処理を加えると立方体形状となり,量子箱中の量子準位に由来した振動構造がZ_3励起子吸収スペクトルに現れる.このときかCuCl量子箱に閉じこめられた高次の励起子準位を励起し,その量子箱の基底状態のホールバーニングが観測されたと考えると説明できるサイドバンドホールが永続的ホールバーニングとして観測された.(3)CuCl量子ドットのホールの形成効率について測定の結果,ガラス中のCuCl量子ドットにおいて最大0.097という永続的ホールバーニングを示す材料中最大の大きな値を得た.この事実は,半導体量子ドットが有望な光多重メモリー材料であることを示している.(4)永続的ホールバーニングにより,CuCl量子ドット中の量子化された励起子準位の均一幅を温度の関数として研究し,量子化された励起子と量子化された音響型フォノンとの相互作用を研究した.温度上昇に伴い,量子化されたフォノンがボ-ズ分布を反映して活性化され,励起子の均一幅に寄与できることで均一幅が広がり始める様子がスペクトル領域で明らかになった.
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