研究概要 |
1.有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2の磁束状態の研究 二次元構造を有する標記の系の縦波音速を磁場と音波の伝搬方向のさまざまな角度で測定した.この結果,この音速異常は二次元のパンケーキ磁束間の揺らぎと音波との結合に起因するものであることが明らかとなった.これはこの系の大きなグリュンナイゼン定数に起因し,計算結果との良い一致を示している. 2.β-(BEDT-TTF)_2I_3の超伝導転移に伴う弾性異常 標記物質は条件によって2つの超伝導を示すことが知られていたが,その原因と2つの転移が同質のものであるかどうかについては明らかではなかった.今回,^3Heクライオスタットを整備し,1.4Kと6Kの超伝導転移における音速異常の観測に成功した.両超伝導共,その音速異常は熱力学の関係と矛盾なく説明されることが分かった. 3.有機導体の大型単結晶の育成 (BEDT-TTF)_2I_3の結晶成長機構解明のためにモノクロロベンゼン溶液との平衡状態の解析と多形現象の解明を行った.この結果,(BEDT-TTF)_2I_3結晶は溶液中で中性のBEDT-TTFとI_2に分解し,両者は平衡状態をとることが明らかとなった.また,室温付近ではα型よりβ型が,また,低温ではβ型よりα型が熱力学的に安定であることを明らかにした.このことから,過飽和度と温度によって多形の核形成を制御できることを明らかになり,通常の方法では得にくいα型の大型単結晶の育成に成功した.併せて,κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2,κ-(BEDT-TTFj_2Cu[N(CN))_2]Brについても単結晶の育成を行いそれぞれmmオーダーの単結晶を得ることに成功した.
|