研究概要 |
強磁性体の磁気モーメントに平行に強いマイクロ波磁場を加え非線形励起(パラメトリック励起)を行うと,特定の波数を持ったマグノンのみが強く励起されて、マグノン非平衡状態を作り出すことが出来る.これらのマグノンはマグノン間散乱過程によりエネルギーを失い,やがてマグノンバンドの底に集まって凝縮状態になることが予想される.この研究ではまずこの凝縮状態のマグノンが放射するマイクロ波を探索し,その性質を明らかにしようとした.非線形励起実験はイットリウム・鉄・ガ-ネット(YIG,直径約1mmの単結晶球)の磁化容易軸である[III]軸方向に磁場を加えて行った.励起マイクロ波周波数は9.6GHzで,シンセサイザからの出力マイクロ波を進行波管増幅器により最大16Wに増幅して試料に加えた.その結果試料の周りに巻いた小さいピックアップコイルによってマイクロ波信号が検出された.そのシグナルはロ-パスフィルタ,低雑音マイクロ波増幅器を経てマイクロ波・スペクトラム・アナライザで観測された.そのマイクロ波の周波数は励起マイクロ波のそれとは異なり、スピン波バンドの底よりやや低い周波数およびその2倍,3倍の周波数であった.そのスペクトルは幅を持っているため,マグノンが単一周波数に凝縮しているという確証はまだ得られていない.また非平衡マグノン対とそれを励起するマイクロ波共振器との非線形相互作用も重要になり、それら2つの結合系として扱わなければならない.その考えの基に理論的考察も進めている.
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