研究概要 |
今年度は昨年度までに整備した実験・観測装置を用いて氷の衝突破壊実験を行い,その結果を整理し,惑星形成過程への応用を試みた。 初期発生圧力12GPaの高速度衝突実験では複雑な衝撃圧の減衰過程が明らかになった。弾丸サイズ1.6mmの実験では,圧力は衝突点から1mmですでに2GPa程度にまで減衰する。その後4mmまではべき指数が-2の減衰を示す。しかしながら,この先4mmから10mmまではほとんど減衰は起こらず一定の圧力を示す。この圧力は約200MPaであり氷のHELとほぼ一致する。 高速度カメラを用いた氷の内部可視化実験により,衝突破壊過程を500nsの間隔で撮影することができた。その結果,衝撃圧力10GPaから200MPaの間では4.4km/sで伝播する高速度の衝撃波が観察された。この衝撃波の背後では氷はほぼ透過率を失い,真っ暗に見える。200MPaの一定圧力領域(4mm〜10mm)では、波が先行弾性波とその背後の不透明領域に分離する。先行弾性波は3.7Km/sと氷のP波速度に近い速度で伝播する。背後の不透明領域はその先端がきれいな球面をしており伝播速度は2.6Km/sであった。この不透明領域は氷がHELを越えた後に圧縮破壊を起こしている様子を示すと考えられる。 本研究を通して氷天体の再集積条件を求めることができた。衝突速度480m/s,質量比0.13の場合の再集積条件は,天体の脱出速度が衝突時の重心速度よりも大きいことである。氷天体の場合半径150kmを越えるようになると衝突角度に関わらず広い領域で再集積が起こるようになる。一方,衝突速度500m/sから5km/s,質量比10^<-1>から10^<-5>では,半径500km/s以上の天体への衝突では必ず再集積が起こることが示された。
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