研究概要 |
質量分析計の改良と,レニウム・オスミウムの分離濃縮のための複雑な化学操作の検討を行った.質量分析計の改良については,高圧電源,磁場電源,また,イオンソースの改良を行いより安定したビームが出るように調整を行った.このことにより感度と安定性が向上した.また,コンピュータのソフトを作成し良好な測定が出来るようになった.化学操作については,最終試料に硫酸がわずかに残る場合があり,この点の改良を試みたが,さらに検討が必要である.レニウム・オスミウムの分離濃縮に用いる試薬のブランクの検討を行った.市販の試薬のほか,塩酸,硝酸,および硫酸の蒸留を行い,改善を試みた.その結果,ブランクがかなり改善したが,さらにブランクを下げる努力と工夫が必要であることが分かった.黒鉱については,いくつかの試料について測定を行い,極めて斬新な知見を得た.すなわち,オスミウムの初生同位体比は,海水の値とほとんど同じであり,黒鉱の鉱液が海水起源であることを示していると思われる.さらに,六甲山系の花こう岩から得られた磁鉄鉱の測定を行い,花こう岩類のオスミウムの初生同位体比を得た.この値は,マントルの値と明らかに異なっており,花こう岩類にはマントル物質の寄与が極めて少ないことが分かった.標準岩石の測定も行い,ある程度濃度の高い試料に対しては,一応測定が行えるが,ブランクの水準に近づくと信頼性が急激に低下することが確認された.ブランクを下げることが今後の課題である.
|