研究概要 |
未固結変形の特徴として,含まれる固体粒子の表面や本体にまで塑性変形や破壊が及んでおらず,主として,粒子間隙内を歪ませている.そのため,変形と間隙水の排水や吸収とが表裏一体の関係にあって,間隙水を通して行われる物質の移動が,このような変形過程と対応しており,間隙における物質や熱の循環機構に大きな影響を与えている. 本研究では,このような未固結変形の実体とそのメカニズムの解明,とりわけ間隙径の変化との関係について検討を行った.その結果を以下に示す. 1)検討試料として,軟岩と呼ばれる間隙率30%から20%程度の泥質堆積岩(三浦半島南部に分布する中新世三崎層;第四紀足柄層群)ならびに未固結時に変形した沖縄本島に分布する古第三紀四万十層群嘉陽層について,それぞれ試料を採取し,間隙率や帯磁率異方性(AMS)について測定した.また,大西洋抵緯度に位置するアマゾン海底扇状地のODPLeg155掘削によって得られたwhole-round core試料について,間隙率ならびにX線CTスキャナーを用いて検討した. 2)剪断面や小断層面における解析結果(嘉陽層ならびに三崎層の例)では,AMSから求めた固体粒子の配列様式の非剪断部より剪断面にかけての変化からすると,粒子の枠組みが大きく歪み,間隙径分布の変化ではより大きな径が壊され小さくなる傾向が認められた.これは,固体粒子が作る堆積物の枠組みがはじめに歪み,そのため間隙が小さくなった結果と考えられる. 3)堆積物中に流動がみられる場合(三崎層やODPleg155core試料)では,間隙径分布をみると,ある間隙径に集中するようになる.すなわち,はじめに流れることで間隙径の大きさが整う傾向がみられた.従って,固体粒子の枠組みの歪み(流動化)は,間隙流体圧の上昇以降に起こったことになる. 未固結堆積物の変形と間隙水の挙動の関係には,(a)外部からの流体の流入によって間隙水圧が上昇し,固体粒子の枠組みが壊され変形させられる.(b)固体粒子の枠組みがはじめに歪むことで,含まれる流体が排出もしくは吸収が生じる,といった異なる二つのプロセスが考えられているが,そのどちらかであるかは,変形が生じる時期の堆積物のもつ特性(含水率や透水率など)と関係して変化するらしい.
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