研究概要 |
1.殻体構造の分化パターンの把握 二枚貝マルスダレガイ科に属する種について,主に化石種の時間的空間的な分布を把握するために,これまでに報告されてきた文献からのデータを整理した上で,新たに本研究において地質年代や産地を再検討した結果を加えて再編した.これらのデータに基づき,それぞれの種の殻体構造を観察した結果を重ね合わせて総合的に考察したところ,マルスダレガレイ科の中で,ユウカゲハマグリ亜科・マツヤマワスレガイ亜科・カガミガイ亜科などの種群において殻体構造の変異が大きく,より原始的な形質状態を示すと推定される殻体構造が認められることが判明した. 2.ミトコンドリアDNAのゲノム解析およびアインザイム分析による遺伝子距離の定量化ゲノム解析およびアインザイム分析などの分化系統学的手法を用いて,マルスダレガレイ科の種間の遺伝子的分化の程度を定量化し,殻体構造の系統学的形質としての意義を評価することを試みた.ミトコンドリアDNAのゲノム解析はMercenaria属の種群を対象として分析した結果,殻体構造の共通する種群間の遺伝距離は小さく一つのクレードを形成し,単系統群であることが判明した.代謝系酸素のアインザイム分析については6亜科の種群を対象として分析した結果,やはり殻体構造の共通する種群間で遺伝距離が小さく,殻体構造の異なるグループ間の平均遺伝距離の方が大きいことが判明した.以上の研究結果から,殻体構造は二枚貝類の種間の類縁関係を反映する重要な形質であることが明らかとなり、ユウカゲハマグリ亜科・マツヤマワスレガイ亜科・カガミガイ亜科などの種群中により原始的な祖先種が存在する可能性が高いことが明らかとなった. さらに多くの分子系統学的データを蓄積して詳細な系統樹を推定することが重要である.
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