研究概要 |
本研究では,造礁サンゴ化石のウラン系列(^<230>Th/^<234>U)年代を時間スケールとして用い,南西諸島,パプアニューギニア,フィリピン諸島,およびフィジー諸島等に分布する過去数10万年間に形成されたサンゴ礁段丘の形成史を明らかにした.その結果,第四紀後期の海面変動や地殻変動に関する以下のような新知見を得た. 1. 過去約130万年間の隆起量が本邦最大の喜界島は,30〜70kaのサンゴ礁段丘が分布する世界でも稀な島として知られるが,当時の礁成サンゴ石灰岩は島内に点在し,130〜80kaの礁前縁堆積物を整合で覆っている.このことは酸素同位体ステージ5aからの海面低下によって生じたステージ3の浅瀬に小規模なサンゴ礁が形成されていたことを示唆する.また,完新世初のサンゴ礁の年代測定から,喜界島には気候最適期が8〜7.5kaに訪れたことと,その後の比較的海面安定期のサンゴ礁が島の隆起によって離水し,完新世サンゴ礁段丘が形成されたと推察される.このことは,志戸桶海岸の試掘調査で採取したコア試料の年代測定により,約8kaの海面上昇期と高海面期,さらに6kaからの海退期に堆積したことが確実な礁性堆積物の岩相変化によっても支持される. 2. 宮古島南西沖の水深118.2mの島棚外縁下に,最終氷期の海面高度を指示する埋没サンゴ礁の存在を確認し,当時の海面が現在より126m低かったことを実証した. 3. パプアニューギニア・ヒュオン半島の後期更新世段丘構成物の^<230>Th/^<234>U年代測定および酸素安定同位体分析により,140ka頃の急激な海面上昇が,おおよそ135〜130kaに中断し,一旦低下した後,上昇を再開したことが解明された. 4. Panglao・Bohol・Mactan・Palawan各島でステージ7,5eおよび5aに形成されたサンゴ礁段丘の分布を確認し,5e当時の海食地形(tidal notch)の分布高度などから,西大平洋の活動的縁辺域に位置するフィリピン諸島の一部が,少なくとも過去13万年間は垂直変動していないことを明らかにした.
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