| 研究概要 |
研究実績の概要
NMR分光法によりケイ酸塩鉱物の局所構造を求めるためには,NMRピークの化学シフトと局所構造の関係を知ることが必要不可欠である.特にマントル内ではSiやAlに対する酸素の配位数が深さとともに,4から6へと変化するため,配位数変化に対するNMRの化学シフト変化を定量的に解明することが特に重要である.今回の研究では,非経験的分子軌道法による化学シフトの理論的計算からこの問題にアプローチした. 分子軌道法による計算では,以下のようなクラスターを使用した;Si(OH)_4,Si(OH)_5^-,Si(OH)_6^<2->,Si_2O(OH)_6,Si_3O_3(OH)_6,Si_3O_2(OH)_8,Al(OH)_4^-,Al(OH)_5^<2->,Al(OH)_6^<3->.これらの計算から,1)SiとAlの化学シフトの配位数による変化と,2)Siの化学シフトの非架橋酸素数依存性を定量的に予言することができた.また3)架橋酸素における化学シフトや核4重極結合定数等とSi-O-Si角度の関係を明らかにした.この関係はシリカガラス等におけるSi-O-Si角度分布を求めるために利用できる.
今後研究室に導入予定のNMR装置による測定と,上記分子軌道法による計算に基づき,スピネル,メ-ジャライト,ペロブスカイト等の遷移帯から下部マントルでの主要構成鉱物の局所構造を調べ,それらの鉱物でのMg,Si,Alの各席でのそれぞれの分布等を明らかにする.またこの結果から配置エントロピーを求め,それらの元素の秩序/無秩序分布が相平衡に及ぼす影響を評価する.
|
