研究概要 |
生物が関与してできる鉱石・鉱物の問題は,過去と現在における地球表層環境多大な影響(または相互作用)と地球史の観点から極めて興味ある課題である.本研球究では (1)生物関与の鉄鉱石の問題で,群馬鉄山についての系統的研究, (2)走磁性バクテリア中の磁鉄鉱の鉱物学的特性についての研究, (3)現在の温泉堆積物中およびプレカンブリアの地層中から産出するストロマトライトの研究の3つをサブテーマとして研究計画を遂行した.この結果,特に(1)については鉄鉱石のなかに,バクテリア,藻類,苔類の化石がさらに確認され,それら生物が鉄質沈澱形成へ寄与していることが,それぞれについて具体的に明らかにされた.さらにそこで形成される鉄鉱物と関連鉱物等についてもその組織・構造・結晶度等についてくわしく電顕鉱物学的に記載された.また現在形成されつつあるところで,湧水と流水の化学的性質を調べ,現在の生物相(バクテリア,藻類,苔類)がどう具体的に鉄質沈澱を集積しているかを刻明に記載した.以上現在過程のデータを元に,過去のプロセスとしても類似の現象が起こっていることを推定し,本鉱床が生物誘導型鉱床であることを示した.これらの結果はアメリカ鉱物学会誌に掲載された(1999年,1月号).(2)については,走磁性バクテリアにより形成された磁鉄鉱の鉱物学的,結晶学的特徴を記載しその意義を論じた.(3)についてはオーストラリアのプレカンブリア時代の地層中のMn鉱物の濃集によるストロマトライト構造という珍しい構造体を発見記載し,現在の温泉性ストロマトライトの各種を報告した.特に湯の小屋温泉ではMnストロマトライトを見い出し記載した.また(2)の走磁性バクテリアとの関連で,火星隕石から生命の痕跡の可能性があるとのトピックスに関連し,コメントもした.
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