| 研究概要 |
片理の発達したカンラン岩の組織解析を行い,その変形過程について考察を加えた.この岩石には顕著なカンラン石の配向が認められ,高圧下で7〜8%の縦波速度異方性を確認した.画像解析ソフトにより2000個以上のカンラン石粒子の形状を効率的に解析し,粒径,面積,周囲長,アスペクト比等の統計的な記載を行った.得られた形状パラメータのヒストグラムはガンマ分布あるいは指数分布でよく表され,例えばアスペクト比,円形度,円相当径の平均値(標準偏差)はそれぞれ1.83(0.48),0.66(0.58),59.1(52.7)μmである.また形状パラメータ間には相関が認められ,カンラン石粒子の形状に自己相似性があり,特に粒子の周囲長Pと面積Sとの間にP∝S^<0.54>なる関係が認められ,形状パラメータのフラクタル次元は約1.1である.
今回の試料についてさらにU-stageを用い,100個のカンラン石粒子のファブリックを測定した.b軸が片理面に垂直な方向に配向し,a軸とc軸は片理面に平行なガードル分布を形成している.これは(010)[100]すべりが優勢な高温変形でなく,[001]すべりなども活動できるやや低温側の変形であったことを示唆している.さらに結晶内すべりに都合よく向いている粒子は細粒化し,すべりに不都合に向いているものは大きな粒子のまま残っており,粒径の結晶方位依存性が認められた.これらの結果は上部マントルのレオロジーを調べる際の基礎データとなる.
またほぼ方解石からなり流動組織の発達した石灰岩について,面構造と平行な面(XY面)と垂直な面(XZ面)について解析を行った.やはり形状パラメータのヒストグラムはガンマ分布でよく表される.この岩石のXZ面ではZ軸方向に細長い粒子が認められ,一方XY面は等粒状である.今回の定量的な統計解析によって数値でその違いを表し,例えばアスペクト比と円形度の平均値がそれぞれXY面で1.68,0.57,XZ面で1.91,0.55である.両パラメータとも1に近いほど等粒状であることを示す.
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