研究概要 |
本研究は,ケイ酸塩鉱物中の遷移元素の席選択性を求めるために,席選択性が結晶場効果に支配されるMn^<3+>、および,席選択性が結晶場効果に影響されないFe^<3+>,Ti^<4+>を含みうるケイ酸塩鉱物,すなわち,単斜輝石,パンペリー石-オホーツク石-ジュルゴルダイト系パンペリー石族鉱物,準長石族鉱物であるメリライト,ネフェリンについて,上記遷移元素とその席選択性の関係,および構造変化について検討を行った。使用した試料は,天然のものと合成のものである。合成試料は,本科学研究費補助金で購入した熱水合成装置あるいは既設のマッフル炉で行った。また,遷移元素の席選択性あるいは結晶構造解析のために,本科学研究費補助金で購入したメスバウアー分光分析装置や既設のX線粉末ディフラクトメーターを利用したリートヴェルト法による結晶構造の解析を行った。Fe,Cu,Mnを含むメリライトに関してすでにAkasaka et al.(1985,1986)が報告した法則性を支持する結果が得られたが,ネフェリンについては常温における結晶構造のゆがみが著しく,メスバウアー分光法およびX線粉末回折法による解析結果では詳細が解明できなかった。メリライト,ネフェリンについては変調構造が存在するため,今後,本研究結果に基づいて高温状態でのその場観察による測定が必要である。輝石については,6配位席と4配位席に分布する遷移元素の席選択性の定量的推定を可能にする法則性を明らかにした。また,CaMgSi_2O_6(Di)-CaTiAl_2O_6(Tp)系,DiCaFe^<2+>Si_2O_6(Hd)-Tp,CaFe^<3+>AlSiO_6-CaTiAl_2O_6系の単斜輝石の4配位席におけるTiの席選択性と構造変化を検討した結果,従来の常識に反して,Tiは6配位席よりも4配位席を優先的に占有することを明らかにした。この結果,輝石においてもアルミニウム排除則が厳格に成立していることが示唆されるとともに,ケイ酸塩鉱物中のTiの挙動について更に解明が必要となった。
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