研究概要 |
1. 相対論的変形凍結芯電子近似の検討-多くの数値計算を試みた後、コア様基底関数の計算に関しては、従来行われてきたような「数値」波動関数をシュミレートするのではなく、比較的多数の解析的基底関数を用いて良い波動関数をあらかじめ計算しておき、この波動関数のコア部分を少数の基底関数によりシュミレートするのが最良の方法であることが分った。しかしながら、コア・ハミルトニアン行列の計算法に関しては、種々様々なスペクトル表現を試みたが、数値の安定性が良くなく、未だ最良の方法を見出していない。 2. 相対論的配置間相互作用法プログラムの開発-4成分波動関数の取扱いおよび多量の分子積分の処理のための有効なアルゴリズムを考察しなければならず、方法論の定式化に際し、多くの困難に会ったが、小さなプログラムは動き出しつつある。これを更に改良し、いかなる分子にも適用できるプログラムにする作業は次年度の課題として残った。 3. 分子の相対論的全電子SCP計算-それ自身に対する興味と変形凍結芯電子近似への参照とするため、GdF,GdF_2、ThOの相対論的および非相対論的SCF計算を実行し、相対論効果を見積もり、学術誌に発表した。現在、更に、LaF,CeF,PrF;ZrO,HSO,RSOについての計算を実行中である。 4. 分子積分の新しい計算法-ラゲール・ガウス型関数の分子積分の漸化式、球面調和ガウス型関数のコンパクトな表式、分子積分に現れるタルミ係数の簡単な導出法などを学術誌に発表した。 5. その他-相対論的モデルポテンシャル法により水銀2量体のポテンシャル曲線を計算し、これを用いて分子動力学法により、液体・固体の相転移点を再現するよい結果を得た(三好永作、酒井嘉子[九大]との共同研究)。また基底関数の軌道指数も最適化する相対論的基底関数系の作成を開始した。変分崩壊は生じないようである(古賀俊勝[室蘭工大],舘脇洋[名市大]との共同研究)。
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