研究概要 |
本研究は、分子多価イオンの新しい科学反応(組替え反応)を見いだし、その動力学を調べることを目的として行われた。イオンに限らず、一般に組替え反応は熱エネルギー近くの低エネルギー領域において起こる確率が高いので、まず低エネルギーイオンビームを発生させる技術の獲得に力を注いだ。質量分析された各種の分子イオンについて、数eVまでの低エネルギービームを得ることに成功し、これによって、ビーム/チャンバー法で、低エネルギーイオン-分子衝突の実験が可能になった。 2価イオン源としては、デュオプラズマトロン型の放電を用いた。種々の気体または混合気体について放電プラズマの質量分析を行った結果、数種の準安定分子2価イオン(寿命10マイクロ秒以上)の存在が確認された。それらのうちCO_2の放電から得られるCO_2^<2+>, CF_4の放電から得られるCF_2^<2+>について、種々の原子、分子を標的とした衝突実験を行った。その結果、分子2価イオンの行う主要過程には、衝突誘起解離: AB^<2+>+M→A^++B^++MおよびA^<2+>+B+M,電荷移行: AB^<2+>+M→AB^++M^+,解離性電荷移行: AB^<2+>+CD→AB^++C^++D,組替え反応: AB^<2+>+CD→AC^++BD^+(またはB^++DまたはB+D^+)があり、全体として非常に反応性に富んでいるが、前3者が主要過程であり、組替え反応はマイナ-な過程であることがわかった。それにもかかわらず、CF_2^<2+>+N_2Oの系において、きわめて興味深い組替え反応生成物がいくつか見いだされた。そのひとつは質量数49のNOF^+である。その強度の衝突エネルギー依存性の測定から生成の動力学についての情報が得られた。
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