研究概要 |
本研究は、筆者らが初めて見出した三角形型の骨格を含む白金IIクラスター錯体について,このタイプの骨格をもつ新規化合物の合成,構造,反応性,電子構造などその化学を総合的に研究することを目的とする.以下に主な成果を示す. 三角形型白金(II)三核クラスター錯体の合成法.このタイプのクラスター骨格を形成できる面内配位粒子はグリオキシム類,ジアミンなどの窒素配位の2座キレート配位子に限られるが,以下の二つのルートにより目的化合物を合成できることを明らかにした.使用する面内配位子の種類によってルートを選択する必要がある. 1)白金II価四核クラスター錯体[Pt_4(CH_3COO)_8]の骨格変換反応に基づく合成法.ドナー原子周辺が嵩高いジフェニルグリオキシム(dpgH_2),ベンゾキノンジオキシム(dqgH_2),およびN,N‘-ジメチルエチレンジアミン(Me_2en)などを面内配位子として使用する場合,この反応によって目的錯体の合成が可能である. (2)三角形型白金(II)クラスター錯体の面内配位粒子置換反応に基づく合成法.上記(1)で得られた三核錯体から誘導する方法で,エチレンジアミンやその誘導体に適応できる. 2.195Pt-,131C-,1H-NMR,X線解析に基づく分子構造,EHMO計算による電子構造研究.いずれの三核錯体においても,クラスター骨格は二等辺三角形型であるり,白金間には直接結合が存在する.スピン-スピン結合定数J_<Pt-Pt>の大きさは7500〜8000Hz程度である. 3.クラスター面内の配位粒子置換反応性に関する研究.(1)グリオキシム類を含む系では,分子内水素結合のため反応性が著しく低い.(2)分子内水素結合が存在しない系では,置換活性ではあるが白金ー窒素結合が強く反応性は著しく高くはない.
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