研究概要 |
光電子角度分布から,表面近傍分子の集合状態や分子配向(波動関数の空間配向)が得られるが,多くの原子で構成される複雑な構造を有する分子の集合体からの光電子強度解析については,光電子強度をどのように計算するかが問題であった。本研究では,これまで我々が行ってきた有機(超)薄膜の角度分解紫外光電子強度の解析法を改良するとともに,有機超薄膜をはじめ高分子薄膜などのより複雑な有機薄膜表面・界面の分子配向と電子状態の定量的研究を行った。 光電子角度分布計算法の改良,高配向有機超薄膜の作製,角度分解紫外光電子分光実験と結果の理論的解析に加え,これらによる研究結果の妥当性を検討するため,他の表面敏感な実験法[ペニングイオン化電子分光法(PIES),高分解能低速電子エネルギー損失振動分光法(HRLEELS),低速電子透過法(LEET),低速電子回析(LEED)]による研究も並行して行い,これらの結果との総合的な比較検討を行った。その結果,MoS_2(0001),グラファイト上のフタロシアニン類やCu(100)上の直鎖アルカンなどの有機超薄膜に対し,分子配向・配列の決定,分子の動的振る舞いと有機薄膜成長機構,金属/有機半導体界面での界面電子構造や,これら有機薄膜の価電子構造による詳細な知見が得られた。また,高分子などの揺らぎのある固体表面での分子配向分布をも得られることが分かった。
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