研究概要 |
ガ-ソン材を用いた界面き裂からの延性破壊や混合モード荷重下の延性破壊の解析において,特性値が解析結果におよぼす影響について考察した後,有限変形弾塑性有限要素法とカルマンフィルタの併用による逆解析を行って空孔発生に関するガ-ソン材特性値を推定する方法を提案し,数値実験により本方法に適した試験片形状および変位測定位置を決定した.すなわち,中央に円孔を持つ平板と外側切り欠きを持つ平板の2種類の試験片の合計4ヶ所における変位を5つの変形段階において測定すれば,本手法により空孔発生に関するガ-ソン材特性値の推定が可能であることを明らかにした.この結果を材料学会誌およびComputational Mechanics誌に発表した. また,本手法の対象を変形のひずみ速度依存性を考慮に入れたガ-ソン材に拡張するために,母材が弾/粘塑性体で表されるとして変形のひずみ速度依存性を特徴づける二つのパラメータの同定を行った.この逆解析にも本手法を用いてた.逆解析の入力として,スプリット・ホプキンソン棒試験装置における入力棒と出力棒上のひずみゲージの出力を用いた.弾/粘塑性体の構成式として,Symonds and Tingの式を採用し,まず,数値シミュレーションを行って,衝撃棒の衝突速度が異なった2種類のデータを観測量として用いれば,推定結果が初期値に依存し難くなるという結果を得た.つぎに,この結果に基づいて2個の銅の試験片を用いて2回の実験を行い,実験結果を入力として逆解析を行った.この結果を機械学会論文集に発表した.国際会議'WCCM4'においても発表する予定である. さらに,将来本手法を拡張して衝撃破壊特性の同定に用いるという着想から,衝撃問題における逆解析に関する内外の研究を展望した.その結果,この分野には材料の特性値の同定ばかりでなく,本手法を有効に適用できそうな多様な逆問題が存在していることを明らかにした.この結果を機械学会論文集に発表した.
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