研究概要 |
本研究で対象とした各金属基複合材料(MMC)について得られた研究実績を以下に示す. 1.繊維強化型MMC:一方向に配向したSiCウィスカで強化されたアルミニウムにおけるクリープ条件下での損傷過程について,ユニットセルモデルに基づいた有限要素法(FEM)を構築し,それを用いたシミュレーョンを行った.その結果,ウィスカ端面で損傷が発生し,端面から界面剥離が進行することが判明した.また,MMCの焼入れ過程に関する熱-力学的解析手法をFEMコードとして構築し,界面における残留応力を解析した.解析結果から,ボイドの形成およびその成長による損傷が界面に生じることが示唆された. 2.粒子分散強化型MMC:SiC粒子を強化材,Al合金を母材とする粒子分散型MMCを遠心鋳造により創成し,鋳造条件が遠心力方向の強化粒子の分布特性に及ぼす影響について実験的に明らかにした.一方,遠心鋳造過程中の温度変動に伴う溶融マトリックス金属の凝固およびその中での粒子移動を考慮したFEMコードを構築した.本解析手法を用いて,遠心力方向の強化材分布および遠心鋳造後の残留応力に関して,遠心鋳造条件に対する依存性を解析した.得られた解析結果の妥当性を,実験結果との対応から実証した. 3.表面改質型MMC:爆発溶射法によるセラミックスによる金属表面の改質に関して,被覆過程の温度場と残留応力場を解析するFEMコードを作成した.それを用いた解析結果から,被膜側には高い引張残留応力を生じることがわかった.さらに,アルミナを爆発溶射したSUS304鋼の円筒試験片を用いて2軸負荷試験を行い、被膜剥離の開始がMises型相当応力に支配されることが判明した.また,もう1つの表面改質法としてスパッタリング法を着目し,その被膜構造を解明するため分子動力学法による解析手法を提案した.解析の結果,被膜-母材界面の接合機構として投錨効果の影響が大きいことが示唆された.
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