研究概要 |
本研究では,まず与えれれた工具電極形状と工作物形状から加工後の工具電極消耗と,加工の結果として得られる工作物形状を求めるための順方向のシミュレーション方法を開発した.この方法は,実際の放電加工現象に忠実に,以下のような単純なルーチンの繰り返しとして加工を計算機上でモデル化するものである.つまり,工具電極面に沿ってメッシュ分割し,メッシュ毎にギャップが狭く,加工屑濃度が高いほど放電確率が高くなる様に定義された評価関数を計算する.そして,工具電極面上を探索し,評価関数の最も大きなメッシュに放電を発生させる.次に,ギャップと曲率の影響を考慮して,そのメッシュで工具電極と工作物の除去を行なう.次に,新たに発生した加工屑を近傍のメッシュに配置し,すでに過去の放電によって各メッシュに蓄積されている加工屑を再配置する.そのあと電極を送り,次の放電点を探索するためにルーチンの最初にもどる.この順シミュレーションの精度が十分満足できることは,実際の加工実験から証明された. 本研究ではさらに,順方向のシミュレーションとは逆に,加工前の工作物形状と加工後の所望の工作物形状が与えられた場合に,消耗前の工具電極をどの様な形状にすれば消耗した結果として所望の工作物形状が得られるか,という逆方向のシミュレーション手法を開発した.この方法は,上述の順方向シミュレーションのために開発したアルゴリズムをそのまま用いて,逆方向では加工後の所望の工作物形状から始めて順方向の場合と同じルーチンを繰り返す方法である.ただし,逆方向シミュレーションでは,順方向シミュレーションで用いる放電1回当たりの工具電極消耗体積と工作物の除去体積に関するデータベースを,工具電極と工作物とで逆転させてルーチンを繰り返す.この考え方が正しいことは,順方向のシミュレーション結果である工具電極形状を初期状態として逆方向シミュレーションを行ったところ,工具電極形状が順方向シミュレーションの初期形状に精確にもどったことから証明された.
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