研究概要 |
本年度が最終年度であることから,研究代表者及び分担者は平成8年度に引き続いて高度機能集積形主軸構造の構築に関する重要な基礎研究を遂行し,以下のような新たな知見を得た. (1)主軸の運転時の挙動に大きな影響を与える因子でありながらこれまでほとんど明らかにされていない軸受結合部の接触圧力に着目し,その計測に超音波を利用する方法を提案した.そして,較正実験において超音波の反射波情報から接触圧力を定量的に評価する指標を抽出し,主軸運転時において推定した接触圧力と主軸の挙動とを比較検討した結果から,本方法の有効性を明らかにした. (2)軸受結合部の接触圧力を外部から制御することを目的として,平成8年度に提案したテ-パ結合型軸受ハウジングを組み込んだ主軸系を製作するとともに,基本特性の確認及び調整実験を行った.その結果,本機構によって,軸受支持剛性の調整が可能であることを明らかにした. (3)軸受外輪カラーのひずみを利用する軸受予圧荷重のインプロセス計測方法を提案し,主軸運転時に推定した予圧荷重と主軸の軸方向変位挙動との対応関係を検討した結果から,本方法の有効性を明らかにした.また,この方法によって,これまで経験的に知られているのみであった,円すいころ軸受の「なじませ回転」の効果を定量的に評価できる可能性があることを指摘できた. (4)高度機能集積形主軸構造のプロトタイプとして多層主軸構造を指摘し,その有効性を確認するために,二層主軸を対象としてその熱的特性について実験・解析の両面から検討した.その結果,当該構造の熱的特性は,基本的に内外主軸系の熱システム間の熱的バランスにより決定されること,熱的バランスの形成には,主軸系内に存在する空隙部の温度挙動が大きく影響すること,さらに,通風冷却により熱的特性改善が望めることなどを明らかにした.以上の研究成果を総括して,次世代主軸構造の実現へ向けての重要な基礎技術を提示することができた.
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