研究概要 |
気相合成法でダイヤモンドが容易に入手できるようになり,工具あるいは耐摩耗材料として少しつではあるが浸透してきた.さらに,広い波長範囲の光を通すことから,光学部品へも適用が試みられるようになってきた.このような状況にあって,いかなる適用に際しても研磨が不可欠であることに気づく.機能を生かした使い方では幾何学的形状ばかりか,機能に直結する研磨面の性状も大きな問題となる.そこで,研磨加工されたダイヤモンドの表面および表面直下の性状について加工変質層の観察方法を検討しながら,これを評価したものである. 先ずダイヤモンドの研磨特性を検討した.ついで,ダイヤモンドの加工変質層の評価が,多の材料と同様に腐食法でできるのではないかと考えて,空気腐食と水素プラズマ腐食法について検討し,水素プラズマ腐食が適することを明らかにした. 単結晶ダイヤモンドを_<600と>1500ビトリファイドボンドダイヤモンド砥石で研磨した.研磨面を水素プラズマで腐食すると微細な亀裂が現れ,ダイヤモンド研磨面にも加工変質層が存在することがわかった.この際の最適腐食条件は,腐食温度800℃,腐食時間30分であることを明らかにできた. さらに,光学部品に使用できるような良質なダイヤモンド膜をマイクロ波プラズマ法で合成した.そしてこれらを単結晶の場合と同様に_<600と>1500砥石で研磨し,腐食した.その結果,単結晶ダイヤモンドと同様に亀裂が生成された.単結晶の場合亀裂の方向が結晶方位に依存するように揃って観察されたのに対し,ダイヤモンド膜の場合にはこのようなはっきりした規則性は見いだせないものの,微視的には方位の依存と思われるように研磨方向に依存するように観察された.これはダイヤモンド膜が多結晶体であることに起因すると思われる.得られた結果は,ダイヤモンドの摩耗機構を明らかにする有力な裏付けになるものと期待できる. また研磨の際,熱電対を研磨点近傍に配置して研磨時の温度を測定したところ,研磨温度の変動が大きいことを見出し,この原因を探るために研磨時の発光の分光を試みた.単なる加熱によるものでない発光が目視できるものの,分光結果として得るには至たらなかった.分光方法の検討も含めさらに継続する予定である.
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