研究概要 |
本研究は化学独立栄養細菌の一種であるチオバチルス・フェロオキシダンスを用いて,金属の微細加工を行うことを目的として,平成8年度から平成9年度までの2年間にわたって行われた.以下のその概要を述べる.従来の加工技術は物理的なエネルギーや化学的なエネルギーを加工したい箇所に集中して加えて,その部分を除去したり,変形させたり,あるいは付加したりしていた.これに対して本研究で提唱したバイオマシニングという加工法は,生物的なエネルギーを用いて,除去加工を行おうとする世界で始めての試みである.まず第1年目にはこのバクテリアを純粋に培養する方法を確立した上で培養液中で加工実験を行い,チオバチルス・フェロオキシダンスが基本的に金属を除去加工することが可能であること,加工量が加工時間にほぼ比例して増加すること,工作物にプラスの低電圧を加えることで加工量がほぼ2倍になること等を明らかにした.次いで第2年目は,実用に当たって問題になると考えられるサイドエッチの問題を取り上げて検討を行った.その結果,本加工法ではエッチファクタはほぼ2となり,深さ方向への加工が優先されていることか明らかとなった.さらに,加工量の増加とサイドエッチの減少を目的として,バクテリアを含んだ加工液を高圧で被加工物に供給するというジェット注液法について実験的検討を行った.その結果,加工速度の大幅な増加とサイドエッチの減少が認められた.今後は,この加工法の実用化に向かって,加工部分の効果的な指定方法や加工装置の開発等について検討を加える必要があると考えている.
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