研究概要 |
我々の住む社会において,機械の振動,騒音,不快さといったNVHの分野における問題を解決し,人間にとって快適な居住空間を作り出すことが重要な課題となっている.しかし,機械から発生する騒音を最小にし,かつ心地よくリズミカルな音で機械の稼働状況を知らせる静音最適構造設計手法といったものがまだ十分に明らかにされていない. そこで本研究では,すずむし,こおろぎ,あるいはかんたんなどの鳴き声の美しい昆虫の翅の構造と発音メカニズムを工学的に解明するため,昆虫の翅の構造の精密測定と振動モード解析を行い,そしてその結果を工学的に静音最適設計へ応用するため,平板を対象として厚さを局部的に変更し,またいくつかの編み目パターンを掘り,発生する振動モードおよび音のコントロールについて検討した.本研究で,得られた結果は以下の通りである. (1)昆虫の翅の構造の精密測定 こおろぎの翅をプラスチックでモ-ルドし,微少量ずつ削り出し断面を写真撮影する方法により,翅脈のため凹凸が激しい翅の形状を精密に測定でき,翅脈は波板状の構造であることが分かった. (2)昆虫の翅の振動モード解析 (1)で測定したデータから,こおろぎの翅の有限要素モデルを作成し,翅脈の端にある翅と胴体の付け根,およびこすり器にたいして種々の境界条件を与え振動モード解析を行った結果,こおろぎの鳴き音の主成分の周波数に一致する固有振動数は見られなかったが,音に寄与している振動モードを確認することができた. (2)編み目模様をもつ平板の振動モード特性 局部的な厚さの変化を含む編み目パターンをもつ平板の実験モード解析を行った結果,編み目による固有振動数および振動モードの特性を明らかにすることができ,編み目の変更による音響放射パワー最小化のための検討を行った.
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