研究概要 |
・分子構造の異なる鉱油.タールナフテン油,合成潤滑油を用いて低温度領域でのせん断挙動を調べ,低温度域では潤滑油は粘弾性的に挙動し,狭い層内でのみせん断滑りが生じ,せん断応力τはτ=aexp(Ea/RT),a:定数,Ea:活性化エネルギ,R;気体定数,T:絶対温度,で表示でき,活性化エネルギの大きさは芳香族>飽和縮合環>パラフィンの順となり,2円筒試験でのトラクション係数と同じ順序になり,低温度せん断試験によりトラクション係数の評価が可能なことが分かった. ・2円筒トラクション試験において,潤滑油の粘度-圧力係数αと接触圧力pとの積αpが10以上では潤滑油は弾塑性体として挙動し,トラクション係数はほぼαpのみによりより決まる. ・不完全給油条件下での形成油膜厚と摩擦係数の理論値と実験値との比較により,滑り速度が増加するにもかかわらず,摩擦係数,油膜厚が減少する臨界滑り速度が存在し,この臨界速度以上では実験値は理論値とは異なり,油膜厚さに比べて摩擦係数が小さくなることが分かった.これは臨界滑り速度以上では,接触域に導入される潤滑油粘度が給油粘度と異なり,低粘度成分が主として導入されるためである. ・ナノメータ厚さの油膜測定が可能な点接触転がり/滑り試験機の試作と蛍光物質,画像解析を利用した測定法の開発を行いつつあり,従来の光干渉法に比べて,はるかに分解能の良い油膜測定,特にナノメータ厚の薄膜の挙動の観測の可能性を明らかにした. ・超薄膜光干渉法による等加速度条件下でのEHL膜厚を測定し,等速度条件下での膜厚と異なること,この差違の主因はスクイズ作用にあることを示した.
|