研究概要 |
巨大なメモリを必要とする大規模な流体計算を行う場合、数百〜数千のプロセッサを持つ分散メモリ型の超並列計算機が主流となりつつある。しかし、SIMPLE法やMAC法などの従来の非連立解法を用いると、プロセッサ数の増加、すなわち粒度の低下に伴って効率が低下してきて、十分な加速効果が得られなくなる。本研究では、運動方程式と連続の式を直接連立させて解く連立解法を採用し、粒度の低い非定常非圧縮性の流体を超並列計算し、その有効性を検証した。 なお、連立解法が超並列計算に適している理由としては、速度・圧力の複数種類の変数が同時に更新されるので、通信ライブラリを呼び出す回数が少なく、それに伴うオーバーヘッド・タイムが小さいこと、計算時間の大部分を行列の反転に要するので、完全に並列化できる数値演算の占める割合が相対的に大きいこと、そしてアルゴリズムが簡便であるなどが挙げられる。 加速率、効率などの並列計算結果は下記の通りである。2次元円柱周り流れを格子点数256x128で計算すると、プロセッサ数が256,512,1024と増加するに伴って、加速率はそれぞれ235,374,491と大きくなること、一方で効率は92,73,48%と減少する。1プロセッサ当たりの格子点数を意味する粒度はそれぞれ128,64,32と非常に低いにもかかわらず、全体的に高い効率、加速率を示している。特に1024プロセッサの計算における効率が、粒度が32であるにもかかわらず約50%というのは、他の手法では1-%に低下することと比べて、十分に高い値である。同様な結果を2次元および3次元角柱周りの流れでも確認した。一方、3次元円柱周りの流れを並列計算し、円柱後方に3次元的なカルマン渦列の構造体を観測するなど、計算コードの信頼性も確認されており、今後のLES乱流計算などへの応用が期待される。
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