研究概要 |
本研究では,非線形態流動のアクティブ・フィードバック制御を実現するための要素技術のうち,制御アルゴリズムの基礎的検討,アクチュエータの開発に焦点を絞り,直接数値シミュレーション(DNS)あるいは実験計測によって,将来実用に供する制御システムに対する具体的な指針を得ることを試み,以下の結論が得た. 1)仮想体積力による壁近傍のスパン方向速度変動の抑制により,チャネル乱流における壁面磨耗が大幅に減少する. 2)評価関数のフレッシェ微分に基づく準最適制御手法をスパン方向速度変動に仮想体積力を作用させるチャネル乱流に適用することにより,制御成績が顕著に向上する. 3)ニューラルネットワーク(NN)を用いた最適制御は,既存の最適制御則と同等の制御成績を与える.また,正方形柱回りのカルマン渦のフィードバック制御において,実験的にも効果的な制御が得られる可能性を示した. 4)壁面が2次元の正弦波状に振動するチャネル乱流において,壁面変形の時空間スケールを適切に選ぶことにより,準秩序構造に大きな変化が現れるなど,壁面変形によって効果的な乱流制御が行える可能性を有する. 5)ソレノイドにより動作する3角形状のフラップ群プロトタイプを試作し,チャネル乱流中で周期的動作をさせた場合の乱れの特性を明らかにした. 6)ポリイミド基板を用いたフラップ型電磁アクチュエータを開発し,モデル計算を用いた設計法を確立した.また,軸対称噴流の渦発生がフラップの動作に同期することを示し、渦構造の柔軟な制御の可能性を示した. 7)DNSにより乱流中の固体粒子のシミュレーションを行い,粒子運動に関する統計量を明らかにするとともに,熱輸送を伴うチャネル乱流中において,固体粒子が熱輸送に果たす貢献割合について検討を行った.また,3次元粒子追跡流速計を用いた鉛直チャネル乱流中の計測から,粒子速度の統計量分布の詳細を明らかにした. 以上のように,本研究を通じて,乱流輸送現象を中心とする非線形熱流動のアクティブ・フィードバック制御について,いくつかの新たなかつ重要な理解が得られたが,今後も制御デバイスおよび制御アルゴリズムについて,多角的な基礎的研究を継続する必要性が示唆される.
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