研究概要 |
社会の急速な高齢化にともない,我々の日常生活を支える様々な作業・労働を,機械化・ロボット化することが望まれている.しかし,こうした作業は整備されていない普通の環境下で人と共存して行われるので,その機械化・ロボット化には,従来とは異なる新しい知能化技術が必用である.本研究は,整備されていない普通の環境下で,人と共存・協調して人の作業を支援する複数の人間支援型ロボットと人との協調に必要なロボットの分散型知的制御技術の確立を目指すものであり,平成8年4月から平成11年3月にかけて実施したものである. 平成8年度は,人と複数のロボットの代表的な協調作業問題である,単一の物体の操り問題を力学的・人間工学的に検討し,(1)人との協調作業のための分散型知的制御系の開発と(2)人間支援型ロボット用分散制御系実験システムの構築を行ない,人とロボットの協調問題を力学的に解析し,安定・安全に作業を行うための基本的な制御システムを提案してきた. 平成9年度は,ロボットと人との新しい協調作業の概念を提案し,柔軟・重量物ハンドリングを例として,実験によりその有効性を確認した.すなわち,(1)ロボットによる作業負荷の分担支援ならびに,作業そのものの一部を補助する新しい協調作業の概念を提案した.(2)双腕マニピュレータによる,作業支援システムを構築した.(3)大型金属薄板のハンドリング作業を想定し,負荷分担ならびに,薄板の曲げをロボットが支援する,新しい人とロボットの協調作業システムを構築した.(4)実験により,提案する有効性を確認した. 平成10年度は,これらの成果をふまえ,(1)双腕マニピュレータと全方向移動ロボットを組み合わせたロボットヘルパーを試作し,(2)双腕マニピュレータと全方向移動機構の協調制御アルゴリズムを提案し,(3)インテンショナルフォースに対する物体の見かけの動特性を指定することにより安定に協調ハンドリングを行える,人とロボットの協調作業方式を提案し,(4)システムの有効性を実験により確認した. 以上のように,本研究では,人を支援することを前提としたロボットの知能化技術の研究に取り組み,人と共存・協調して人の作業を支援する人間支援型ロボットと,人との協調に必要なロボットの知的制御技術の基礎技術の確立を行うとともに,プロトタイプシステムを構築しその有効性を確認した.本研究では,知的制御技術に焦点を絞り研究を行ったが,提案するシステムを実現するには,人間工学的に解決しなければいけない問題もあり,今後より一層研究を進める予定である.
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