研究概要 |
SOI構造のデバイスの大きな特徴の1つは,通常のバルク基板のMOSデバイスと完全にプロセス互換性があることである.ところが,SOI構造では,基板中に埋込酸化膜が存在し,Si/酸化膜界面が通常基板より1つ多いため,プロセスメカニズムは必ずしも通常基板を同じとは限らない.本研究の目的は,SOI基板の薄膜Siに酸化を施した場合についてSOI構造特有の酸化過程のメカニズムおよび界面準位の特性を明らかにすることである.研究では,SOI構造の埋込酸化膜とSi薄膜との界面準位を正確に評価し,かつ界面準位密度のエネルギー分布を求めることができる新しい方法を開発した.バルク基板の評価には容量測定法やチャージポンピング法などが用いられるが,ところが,SOI構造にチャージポンピング法を適用すると,ボディ部分の抵抗が高いため,チャージポンピング電流が低下し,正確な界面準位が評価できない.チャージポンピング法とは,ゲート端子にパルス電圧を加えることによる電流をモニターすることにより界面準位等の測定を行う手法である.そこで,ボディ端子付のSOI構造を試作し,ゲート端子ノミナラズボディ端子へもパルス電圧を印加することにより、電流の低下を抑制し,正確なチャージポンピング電流の測定に成功した.また,バイアス条件を最適化することにより,表面酸化膜界面と埋込酸化膜界面を分離して評価することにも成功した.さらに,SOI構造の酸化膜界面における界面準位のエネルギー分布を測定する新しいチャージポンピング法も開発した.これらの新しい評価法により,SOI基板特有の界面準位の特性評価を進め,SOI基板のフロント界面の界面準位は通常のパルク基板と比較しても特にデバイス特性上劣化していないことを明らかにした.
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