研究概要 |
電気機械変換薄膜素子の基盤となるスピンバルブ膜の開発・研究を行い,以下の成果を得た. 1)MnPt/FeCo積層膜において,大きな交換磁場(H_<ex>)を得た. i)glass/Cu(80Å)/Fe_<19>Co_<81>(100Å)/MnPt(100Å)積層膜において,Mn組成が51at.%の積層膜を熱処理したとき,最大のH_<ex>が得られた.このとき,Mn_<51>Pt_<49>の比抵抗は約265μΩ・cm,ブロッキング温度は300〜370℃であった. ii)Fe_<19>Co_<81>(100Å)/Mn_<51>Pt_<49>(300Å)積層膜を熱処理したとき,230℃からCuAu-I型fct構造に規則化することによりH_<ex>は増加し始め,320℃で最大値286〜356Oeを示す.しかし,350℃以上の熱処理でFeCo層とMnPt層の界面でのミキシングが起こり,H_<ex>は減少し始める.このミキシング過程を実際にRBSにより確認した.このミキシングを防ぐためにFeとCoの両方に対して完全非固溶であるAgをFeCo層とMnPt層との間に挟むことにより,30℃だけ耐熱性を改善することができた. 2.耐熱性に優れた高感度スピンバルブ膜FeCo/Cu/FeCo/MnPtの作製した. i)RFマグネトロンスパッタ法によりガラス基板上に堆積したFeCo(50Å)/Cu(t_<Cu>)/FeCo(35Å)/MnPt(300Å)膜の熱処理効果:290℃で熱処理したとき,t_<Cu>=30Åで最大MR比6.2%が得られた.t_<Cu>が35Å以下では幾分熱的安定性に欠けるが,40Å以上では320℃まで安定で,この温度での熱処理によりMR比は寧ろ増加する. ii)磁場感度の増大:軟磁性Fe-SiO_2グラニュラー膜を,フリーFeCo層の上に堆積することにより,フリー層の保磁力を低減し,感度の向上を図ることに成功した.
|