研究概要 |
計算機ハードウェアの大規模・複雑化に伴い,今後の宇宙開発や社会基盤で使用される計算機には,ハードウェア故障に対するより一層高いロバストネス(頑健さ)が要求されている. 本研究の目的は,製造時や動作時に生じた故障を自動的(自律的)に修復する計算機の基本構成を提案し,その性能を評価することである.具体的には,現在開発されているニューロコンピュータを実際に使用することによってその自己組織化能力を定量的に評価し,評価結果をもとに自律的に故障を修復するニューロコンピュータアーキテクチャ(ハードウェア)を提案することにある. 本研究では,ニューロコンピュータ上に自己組織化マップ(代表的なニューラルネットワークの一つ)を実装し,その中に故障ニューロン(プロセッサ)を埋め込み自己組織化の振る舞いを定量的に評価した.この結果,以下の結論を得た. 1)故障プロセッサが存在する場合,今までは発生しなかった自己組織化状態「ローカルオーダリング状態」が新たに発生することが分かった.また,この状態は準安定に存在するが,最終的にはこの状態から全体自己組織化状態(故障が無い時の自己組織化状態)に遷移することが示された. 2)故障ニューロンの出力状態(出力スタック状態)に依存して,上記準安定城田の期間は大きく変化することが分かった.さらに,この期間は臨界スタック値を超えると指数関数的に増加することが分かり,確率モデルから導かれる臨界スタック値と実験結果がよく一致することが分かった. 3)上記臨界スタック値を用いることで,ニューロコンピュータ全体のフォールトトレランスを評価できることを示した. 4)以上の結果から,ウェーハレベルの集積回路を用いた自己組織化マップハードウェアの基本構成を提案した. 今後は,本研究で得られた上記成果を元に自己組織化マップハードウェアの具体的な回路設計を進め,集積回路化を計る.
|