研究概要 |
ロボットの腕や手を始め,宇宙構造物や大型構造まで含めたあるクラスの非線形機械系の運動が位置依存型の非線形回路で表わされることは,既に,昨年度迄の研究で示した.本年度は,非線形回路表現が仮想仕事の原理に基づいたEuler-Lagrangeの定式化(EL定式化)とほぼ同等であることを示すとともに,手先拘束下にあるロボットダイナミクスの回路表現を詳細に検討し,手先インピーダンス制御の理論的展開をはかった.特に,静摩擦やクーロン摩擦を含めた摩擦項と重力項を同時に回帰子(regressors)に基づいた回路モジュールで補償することにより,慣性オンリー(重力/摩擦フリー)ロボットの実現が可能になることを理論的に示すとともに,3自由度のDDロボットを使った実験によってもこのことを確認した.こうして,ロボットのダイナミクスが慣性に依存する項のみで支配されるようにした上で,手先インピーダンス作業の制御系を設計する.そのため,最も単純な1自由度系の素過程について,ロボット側の質量も未知であり,かつ環境側にある対象面の柔軟材質の非線形スチッフネス特性も未知であるという状況のもとで,非線形性まで含めたインピーダンス・マッチングが取れる枠組みを設計し,これがインピーダンス条件を満足する二つの超安定ブロックの負帰還結合で表わされることを示した.つまり,手先作業がうまくいくことは,慣性の補償を行う超安定ブロックと,手先と対象面の間の物理的相互作用(押しつけ力)を調節する超安定ブロックのインピーダンス・マッチングによることを示した.
|