研究概要 |
本研究では,人間の知的情報処理機構をベースとした新しい知的制御,信号処理手法を提唱した. まず,プラントの入出力信号をウエーブレット変換した結果,ウエーブレット変換係数によって,制御対象の非定常性が効率よく抽出,表現できることを確認した.また,多重解像度分析能力を用いて,信号の主要成分である大域的特徴量と,補助的な成分である局所的特徴量を抽出することに成功した.ついで,画像の階層符号化技法を適用することにより,抽出した知識を劣化させることなくコンパクトに表現する方法を開発した.さらに,各層ごとに類似性により分類し,類似の特徴量同士を共有化することで系統的にデータベースに格納する方法を開発した.目標出力値と現在のプラント入出力値をキーとして,類似の特徴を持つ制御信号をデータベース上で検索するシステムを設計した.類似性を評価する基準となる距離空間とキー選択法を検討した結果,k-dトライが有効であることを明らかにした. 以上の結果を用いて,検索した制御信号をもとに局所モデルを作成し,所望の制御目標を達成するための制御信号を生成した.そして,精度の点からは動径基底関数を用いた非線形局所モデルが,演算速度の点からは一般化動径基底関数を用いた非線形局所モデルが有効であることを示した.本手法を航空機の自動着陸システムに適用した結果,制御性能は劣るものの,パイロットが発生する制御動作に近い働きをすることから安全性が向上することがわかった.最後に,プラントの動特性の時間変化が大きい場合にも対応できるように,事例ベースの内容を時間更新する方法を開発した.信号データの挿入と削除を効率よく行うデータ構造を設計し,信号の非定常性・非線形性の強さと,データベースのサイズとの関係を明らかにした.
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