研究概要 |
臨床において歯の動揺を測定することは,歯周組織の状態を知るうえで大変重要な診査である。また高齢化社会に突入するわが国にあって,歯科インプラント(人工歯根)施術はQOLの観点からもますます重要となっているが,インプラントの植立評価法などに関する診査法は未だに確立されていない。本研究の目的は客観的な歯の動揺度診査システムの開発である。著者らは,これまで経験に頼っていた動揺度診査を,客観的かつ定量的に評価するため,歯の動揺度自動診断システムを開発し,臨床において試用してきた。本システムは歯周組織の力学特性を精度良く測定できるものの,その装置の大きさからチェアサイドでの使用には不向きであった。そこで臨床での使用を目的とした小型で簡便かつ客観的な歯の動揺度診査システムを開発した。すなわち,単一周波数の振動を歯に加え,歯周組織の加速度応答を検出する,小型で簡便な歯の動揺度T-M(Tooth Mobility)テスタの開発である。また得られた加速度応答から,歯の動揺に比例する,新しい歯の動揺度指標MI(Mobility Index)値を求め,定量的に表示するようにした。 3年の研究期間において,臨床試用TM-I型およびTM-II型の試作を行い,臨床評価を行って,細部の変更を加え,客観的な歯の動揺度診査システムの開発を完了した。製作された測定プローブは,全長120mm,ベンダ型圧電振動子を組み込んだ先端部は直径10mmの円筒状で,先端部とグリップ部は約15度の角度をつけ,口腔内での操作性を向上させた。測定周波数はほぼ400Hzで,臨床的動揺の差はもちろん,健常歯の歯種別動揺の差も数%の変動係数で識別することができた。さらに臨床における感染に対処するため,プローブ先端にディスポ力バーを装着して測定したが,十分な測定精度を確保することができた。
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