研究概要 |
本研究の内容は3つに大別できる。いずれも東京の水収支・熱収支を対象としている。1つは東京における気温,湿度などの観測結果の分析である。2つめは,大気中の輸送過程に重点を置いた3次元熱・水蒸気解析モデルの開発であり,3つめが地中と地表面における水・熱の輸送過程に力点を置いた水文分布型モデルの開発である。 まず,主として水蒸気輸送の動態に着目し,気象官署地上観測データと東京都大気汚染常時測定局データの時間データを用いて,東京の晴天時の時空間的な変化を解析した。その結果,冬期には湿潤な海風の進入,夏期には大気境界層の発達が水蒸気の時間変化に大きな影響を与えていることを見い出した。 流域スケールの主として大気における水・熱輸送解析のために,土地利用,地形,植生や都市キャノピ-の影響を考慮した3次元熱・水蒸気解析モデルを構築した。人工的な排熱量の時空間分布とともに,水蒸気排出量として,自動車から排出される水蒸気と人間からの出される水蒸気を考慮した。計算より,夏期の日中の気温や水蒸気分布に関しては,土地利用や海風の影響が大きいことや人工的な排熱・排水蒸気の影響は小さいことが判明した。 地表面と地中での水・熱移動に対して,物理法則に従った分布型モデルを構築し,流域の水・熱収支を検討した。モデルを東京23区にも適用し,1992年から1994年の3年間の計算を行った。下水処理場へ流入する流量や東京タワーの観測結果より算出される熱フラックス等に対してモデルの検証を行い,良好な結果を得た。1km×1km格子で1時間ごとの土壌水分量や地表面温度の分布などを算出した。また,地表面の改変や降雨量の多少が水収支や熱収支に大きな影響を与えていることが明確となった。
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