研究概要 |
本研究では生物難分解性有機物として自然界に,特に水道水源中に広く存在が見られるフミン酸と,塩素消毒の結果生成する有機塩素化合物の例としてトリクロロエチレン(TCE),1,1,1-トリクロロエタン(1,1,1-TCE)を取り上げ,実験室規模の反応器を作成し,オゾン,過酸化水素水,紫外線を組み合わせた促進酸化処理プロセスの処理特性ならびに反応機構について検討した。 オゾン単独処理では,フミン酸の脱色過程がMichaclis-Menten型の式で表現が可能であり,その反応速度定数は単位時間に送入するオゾン量に,半飽和定数はフミン酸初期濃度に比例することを明らかにした。また,TCEは30分間で91.7%分解されたが,1,1,1-TCEは全く分解が見られなかった。これに対してオゾン-過酸化水素併用処理ではオゾン単独処理では分解できなかった1,1,1-TCEが30分間で22.2%分解され,TCEの反応速度もオゾン単独処理の1.5倍に増加することが確認された。また,オゾン-紫外線併用処理ではフミン酸の色度除去はもちろんのこと,4.7W以上の紫外線強度でTOCが95%以上無機化されることが明らかになり,TOC無機化率はオゾン単独処理の2倍に達した。オゾン単独処理ではフミン酸が有機酸までしか酸化されないのに対し,オゾン-紫外線併用法では有機酸の酸化分解が起こっていることがpHの変動から推測されたことから,このTOC無機化率の向上は主に有機酸の酸化分解の有無によるものと考えられた。TCE,1,1,1-TCEの処理においても,30分間のオゾン-紫外線併用処理で分解率がそれぞれ97.8%,53.2%となり明らかな処理性能の向上が確認された。以上の結果,難分解性有機物処理において促進酸化プロセスが有効性が示され,特にオゾン-紫外線併用処理の効果が大きいことが明らかとなった。
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