研究概要 |
1995年兵庫県南部地震において,衝撃的破壊と言われる構造物の被害が発生した。これは,地震動のごく初期の短時間に構造物が一瞬にして破壊したと言われる現象である。建築構造物では,多層ラーメン構造の中間階がペシャンコニ潰れた被害が,この例として話題になった。 本研究は,この衝撃的破壊問題を数値解析的に研究したものである。衝撃的破壊の動力学的メカニズムを解明し,その対策を立案することを目的とした研究である。2年間の研究を通して,次の成果が得られた。 1)多層骨組の柱が弾塑性履歴後に脆性破壊するという特徴を持つ場合,地震の途中で一つの柱が破壊するとその層の残りの柱が次々に連鎖破壊する。この連鎖破壊は瞬時に起こり,一瞬にして建物が層崩壊する。これは,兵庫県南部地震におけるコンクリート系建物の中間層の衝撃的破壊を数値的に再現したものである。 2)この連鎖破壊の現象は,一般の柱と梁で構成される多層ラーメン構造でも起こる。例えば,梁が脆性破壊する場合,ある層の梁がすべて連鎖的に破壊する。これは,梁降伏型で設計された鉄骨系建物が兵庫県南部地震で梁端破壊を起こした被害を再現したものである。 3)脆性連鎖破壊を防止するための設計方法を提案した。具体的には,耐力の割増,変形能力の割増,脆性破壊のばらつき制御によって脆性連鎖破壊が防止できることを示した。また,必要な設計式を提案した。
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