| 研究概要 |
遷移金属(TM)と貴金属(NM)とを組み合わせた2元系人工格子および3元系人工格子について,NM層上に成長する様々なTM層の界面構造,成長様式などをRHEEDの連続観察を通して系統的な評価を行い,磁気特性を調べ,両者の関連について考察した.特に,歪みを内包した金属人工格子,″金属歪超格子″を作製し,人工格子の界面構造を歪みという点に注目してナノスケールで調べ,磁性との関連を明らかにした.
[TM/NM](TM=Fe,Co,Ni,Cu;NM=Au,Ag)2元系人工格子の界面構造の研究では,(a)(TM=Fe):Fe/Au系,Fe/Ag系ともにFeはbcc-Fe(110)配向であった.(b)(TM=CoNi):TM/Au系ではTMの格子間隔は積層とともに連続的に減少し,バルク値に漸近したのに対して,TM/Ag系では不連続的にバルク値に変化した.(c)(TM=Cu):Cu/Au系ではCuの格子間隔は積層とともに連続的に変化したのに対して,Cu/Ag系ではCu層の格子間隔は不連続的に変化した.これらの挙動を構成する元素の原子半径,原子間結合力,平衡状態図,などから考察した.
積層順を変えた2種類の[M1/Co/M2](M1,M2=Cu,Au)3元系人工格子の界面構造の研究では,Coに対してAuとCuの原子半径が異なることを利用して,積層順を変えることにより,意図的に界面構造が異なり,内包する歪量が異なる人工格子の作製に成功した.この人工格子の磁気特性の研究では,Cu/Co/Au人工格子はAu/Co/Cu人工格子に比べて垂直磁気異方性が強くなることを明らかにした.この積層順による異方性の違いが内包する歪み量による違いで説明できることを示し,意図的に界面での歪み構造を制御することで,磁気異方性を制御することに成功した.
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