研究概要 |
微構造を制御したセラミックスを得て,高温での力学的挙動(変形と破壊)を様々の手法を用いて評価した.選んだ試料は,微粒アルミナ(粒径はサブミクロン),ムライト,フォルステライト,ジルコニアおよびそれらの複合体である.微構造制御のためには原料粉末の選択・調製が重要であるが,アルミナはアルミニウムの炭酸アンモニウム塩の水和物の熱分解によって得られる微粉末,ムライトとフォルステライトはゾルゲル法で得られる微粉末を用いている.特にフォルステライトの微粒単相多結晶は本研究で初めて得られた. 微粒アルミナの高温変形挙動は,Y-TZPのような超塑性ではなく,動的粒成長(ひずみ誘起型粒成長)によるひずみ硬化をともなう拡散流動であることが明らかになった.初期変形が界面反応で律速されていることも重要な特徴である.微構造制御のための添加物(MgOやZrO_2)は顕著な効果を示し,界面反応とイオンの粒界拡散に大きな影響を与える.SEMやTEMなどによる微構造観察とあわせて,継続課題として現在も行っている. 複合材料は,アルミナージルコニア(AZ),ムライト-ジルコニア(MZ),ムライト-アルミナ(MA)など基本的酸化物同士の系を選び,粒界と力学物性との関係に注目して研究した.AZでは高温変形と動的粒成長に関し,ジルコニア微量添加アルミナとの比較を行い,現象的には変形律速課程の拡散を阻害するジルコニウムの作用を確認した.MZとMAはともに高温破壊に関する基礎データ(遅れ破壊,き裂成長)を得て解析を行っている. 微構造の異なるフォルステライトの高温変形の速度を温度と応力の関数として測定し,変形機構の解明のためのデータを得た.ひずみ速度はムライトより大きく,アルミナ程度の値で,変形律速種の拡散係数が得られた.粒界ガラス相と残留マグネシアの高温変形に及ぼす影響が認められ,微構造と変形機構の関係につきより詳細な研究の必要性を示唆している.
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