研究概要 |
本研究は高温溶融塩環境でのひずみ電極法測定システムを確立し,溶融塩中における材料表面の酸化皮膜の破壊・修復過程を追跡し,その機構を明らかにすることを目的としている. 溶融塩系でのひずみ電極計測システムはほぼ完成し,300℃のKNO_3-NaNO_3溶融塩中でSUS304ステンレス鋼を試料として計測を行った.具体的にはSUS304鋼を不働態化電位に定電位分極した状態で,定ひずみ速度での引っ張り試験を行い,そのときの荷重と電流の変化を記録計測した結果,次のことがわかった. ひずみ電極の電気化学的な挙動は,一般的に,試料極の変形状態により,大きく3つ領域に分かれた.(I)弾性変形領域では試料極の弾性的な伸びによる酸化皮膜の膜厚の減少あるいは皮膜破壊による電流の増加が観察された.(II)塑性変形領域ではすべり変形の結果生じる新生面の出現による電流の急激な増加が観察された.また,変形に対する電流の増加速度は弾性領域より小さくなることがわかった.(III)破断変形領域では破断面の出現による電流増加とその後の破断面の不働態化のための急激な電流減少が観察された.また,塩化物イオンを50mol%まで添加した硝酸塩浴で,引っ張り速度(10mm/minと1mm/min)を変えて伸びに対する応力と電流応答を調べた結果,引っ張り速度が速くなるほど新生面の生成速度が大きくなり,それに再不働態化が追いつけなくなるため,短時間に多くの電流が流れることが分かった. 以上,述べたように現時点では,溶融塩中での金属材料の変形に対しての酸化皮膜の破壊・修復過程を開発したひずみ電極システムにより追跡可能であることを明らかにした.今後,このシステムを使ってデータを蓄積することにより酸化皮膜の破壊.修復過程が明らかにされるものと期待される.
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